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Bing翻訳クリンゴン語版について

tlhIngan Hol mughwI'qoq
「Bing翻訳がクリンゴン語に対応した」と言ふニュースは、トレッキーならご存知の方も多いはず。 私もすぐに試してみました。 が、これがリリースしてはいけないレベルの酷い代物でした…。
日本語→クリンゴン語の場合、Bingは日本語を一度英語に翻訳してからクリンゴン語に訳してゐる(らしい)のですが、英語とは大きく異なるクリンゴン語の文法が全く(※ゼロパーセントと言ふ意味での「全く」)適用されず、英語の文法のまま単語を置き換へるだけ。

例へば…
「私は日本語を話せます」は正しくは{nIpon Hol vIjatlhlaH}(nIpon Hol=日本語、vI- =私は-彼/彼女/それを、jatlh=話す、-laH=〜できる)ですが、
Bing翻訳では{laH pejatlh nIpon}
…(´・ω・` )
pejatlh だと「お前たち、話せ」と言ふ命令形だし、目的語を取らない形なので「〜を話せ」の意味にすらなりません。
Bing翻訳の文を訳すなら(句点を補って)「能力、話せ、日本」となります。


「僕の先生はヴァルカン人です」は正しくは{vulqangan ghaH ghojmoHwI'wI''e'}ですが、
Bing翻訳では{vulqangan 'ej QuQ ghojmoHwI' 'Iv}
なぜか QuQ =「エンジン」や疑問詞の 'Iv =「誰が〜」(英語の関係代名詞のwho?)がはいってゐて理解不能になってゐます。


「ライダーが敵にキックした」は正しくは{jagh pup(ta') lIghwI'}(※丸カッコ内は有っても無くても良い)ですが、
Bing翻訳では{rider pup jagh}
riderが訳せないのも驚きますが、この語順では「敵がriderにキックした」と、全く逆の意味になってしまひます。


動詞・名詞の後ろにくっ付く接尾辞が、英語の助動詞や前置詞の位置に独立した単語のやうに置かれてたり、語順がひっくり返って意味が正反対になるなど、これでは翻訳する意味がありません。
これはBingだけ、クリンゴン語だけの問題ではありませんが、クリンゴン語には以下のような目立つ特徴がありますが、これはどれもBing(及びそれ以外の機械翻訳)では訳出することができないようです。

  • 複数形の接尾辞が -pu'=「言葉を話すもの」、-Du'=「体の一部」、-mey=「一般(それら以外の物)」と3種あり、また puqpu'(子供たち)を puqmey とすると「そこに居る全ての子供」と言ふ意味になる
  • 所有を表す「私の〜」なども「言葉を話すもの」と「話さないもの」で2つに分かれる。 De'wI'wIj =「私のコンピュータ」、DeghwI'wI' =「私の操舵手」など
  • 「〜した」は HoHpu' =「(偶然、もしくはただ単に)殺した」、HoHta' =「殺すことを成し遂げた(目的を達成した)」の違いがあり、文脈を読む必要がある
  • 接続詞が、「(名詞)と(名詞)」、「(文節)と(文節)」で2グループに分かれ、それぞれ「〜と〜」、「〜と〜、〜か〜」(両方か、どちらか一方か)、「〜か〜」(どちらか一方のみ)の3種づつ、計6種あり、話者の主観で使ひ分けされる時には翻訳が難しい(尤もこれは、そもそも他言語への訳が難しい)
  • 三人称複数形の代名詞は chaH =「彼ら/彼女ら」、bIH =「それら」で分かれるが、英語でtheyに統一されるためか訳し分けられない



クリンゴン語は異星人の言語であると言ふ点を深く考慮して設定されてゐる爲、そもそも直訳できない構文も多く、極端な例ですが "Where do you live?"「あなたはどこに住んでいますか?」は Daq DaDabbogh yIngu' =「お前の住んでいる場所を明示しろ」と、疑問文が命令文になるんですね。 いかにもクリンゴンらしさが出てゐて良いのですが、現在の機械翻訳では難しいようです。




クリンゴン語は、400字以内程度なら私が無料で翻訳を引き受けます。
ですから、出來るだけBing翻訳は使はないでくださいm(_ _)m
将来、Bing翻訳が正統に認められるレベルのものになれば良いのですが。