DaHjaj gheD

「今日の獲物」がタイトルのブログは此処にあると言われている

DaHjaj gheD 「今日の獲物」がタイトルのブログは此処にあると云う

pajlu'meH QaQ jajvam

なんかこんなんが。
Indian Trail councilman tenders resignation ? in Klingon
ノースカロライナ州の町議会議員が、辞職届を提出――クリンゴン語で。
http://www.charlotteobserver.com/2014/01/02/4582880/indian-trail-councilman-resigns.html#.UsbNI9JdV9l

 

(pIqaDからローマ字表記に)
veng ghojmoHwI' chonStItutIon
jIchegh poH veb yay.
qaS reSIghnatIon 31 2014 january.
chaq DaHjaj QaQ jaj paj.

 

Teach (the) city (the) constitution
I will return next time to (witness) victory.
Resignation occurs in 2014 the 31st of January.
Perhaps today is a good day (to) resign.

 

クリンゴン語から直譯)
町の教師のチョン・シュ・ティトゥーティ・オン
私は戻る、次の時間の勝利。
レシグナティ・オンの三一の二〇一四のジャヌ・アル・ィ
おそらく今日、日は良い、彼は辞める

本文中にBing飜譯を使ったと書いてあるとはいへ、ちょっと酷い。
機械飜譯丸出しではあるものゝ、poH veb(poH=time, veb=next)がちゃんとクリンゴン語の語順になってるのが不思議。
ひょっとしたらBingがアップグレードされて前より少しだけマシになったのかも?
chonStItutIon、reSIghnatIon、january は辭書に對應する語が無い爲、音譯ですらなく單純に文字を置き換へる方式になってます。 qonStItuSon とでもすればまだ近い音になるのになあ…
またこれらはクリンゴン語の音韻規則に外れてゐて、日本語ローマ字表記の中に「Resignation」が日本語として書かれてゐるのと同じぐらゐ、飜譯とは呼べないレベルの仕上がりですね。
上の直譯も「ここに句點があるだらう」と好意的に解釋して、句點を補って讀んでやっとこのレベル(もっと變な譯にも出來るのにしてない)ですから…

 

英文から譯すとこんな感じですかね。

veng chut ghojmeH
poH veb yay vIleghmeH jIchegh.
DIS 2014 jar wa' jaj wejmaH wa'DIch jIpaj.
pajlu'meH QaQ jajvam.

 

オチはありません。

maQapbejta'!

スタートレックのオーナメントと言へばHALLMARK社ですが、そのHALLMARKがこんなイカしたCMを打ってゐたのですね。

このバード・オブ・プレイは持ってゐますが、これ程のステキCMが流れた國が羨ましい。 ガウロン(ghawran)本人が登場でノリノリなのが樂しい雰圍氣で素晴らしいにも程があるにも程がある。
個人的に氣に言ったのと、なんて言ってるの?って人がゐると思ふので書いておかうと思ひました。 日本語譯はその方が解りやすいと思ひ敢へて直譯調にしてゐます。

Qapla'! (greetings!)
「Qapla'!」
pIj maSuvpu' (In our many battles)
「我々は頻繁に戰った」
batlh maSuvpu' (we have fought with honor)
「我々は名譽と共に戰った」
'ej maQapbejta' (and achieved... victory!)
「そして我々は確實な勝利を成し遂げた」
vaj malopmeH (So to celebrate...)
「そこで、祝ふ爲に…」
tlhIHvaD nob SaSuqpu' (I've gotten you all a gift.)
「お前達に贈り物を手に入れた」(?)
tlhIngan toQDujHom 'oH. (It's a Klingon Bird of prey Ornament.)
クリンゴンの小さいバード・オブ・プレイだ」
toQDujna' rurchu' (It looks so real!)
「本物のバード・オブ・プレイに完璧に似てる!」
Qapqu' wovmoHbogh janHommey (It even has working lights!)
「光る小さい裝置類がしっかり作動する!」

 

(ナレーション)

 

belmo' ??? (That was real nice of him.)
「嬉しいのでXXX」(???)
??? tlho'mey wISuqmo' (Yeah, we should get him a thank you card.)
「XXX 感謝を手に入れるので」(???)

訛りがひどく、一部これで合ってるのかなんとも分からない部分があります。 ただ、他に音が似てゐて意味がより通る單語と言ふものも無いので、これで合ってるはずです。
ただラスト、ナレーション後の二人の會話はまるで聞き取れず、英語字幕と照らし合はせてもよく分かりません。 「相當訛ってる」と考へてなんとか上の結果です。 最後のセリフは、英語字幕からすると ghaHvaD は言ってるはずなんですが何囘聞いても言ってないっぽいですね。
近年になって「カード」に當たる單語('echletHom)も出來ましたが、モチロンこのCMはそれよりずっと前の作品なので代はりに ghItlh(原稿)などが使はれてゐる可能性もあるんですが、どうしても當て嵌るやうに聞こえないので…

 

 

そして時は流れて二千十三年、なんとクリンゴン語での「メリクリ」の言ひ方が正式に決定しました。
QISmaS DatIvjaj! (あなたがクリスマスを樂しみますように!)
QISmaS botIvjaj! (皆さんがクリスマスを樂しみますように!)
QISmaS yItIv! (クリスマスを樂しめ!)
Qapla'!!!

ghItlhbe'lu'chugh Qapbe'lu'.

iPadアプリZen Brushを使用したお習字シリーズ、第十彈!
今囘は少ないけど別に誰も澤山載せて欲しいとか思ってないから良いよね☆

 

pIqaDクリンゴン文字)はあくまで「私の(筆に合った)書き方」で、この書き方が絶對に正しいと決まってるワケではありません。 特に S の字は、私は「) (」の書き方をしてますが、他の地球人は「x(エックス)」の書き方だったり、「几」のやうな書き方の人もゐたり、定説が無いのが現状です。

 

▼bo'Degh▼

jentu' 【ジェントゥーッ】 (飛べない水生の鳥)
明言されてないものゝ、ジェンツーペンギンに由來するのは間違ひないのでジェンツーペンギンを描きました。 ちょっと由來がそのまんますぎて好きになれない單語ですねえ…

 


ngun 【ングーン】 (〔鳥が、枝・止まり木に〕止まる) ※ng は一文字です。

 


laqラク】 (羽ばたく)

 


neb 【ネブ】 (嘴)
魚雷の彈頭は jorneb(爆發する嘴)と云ふので、クリンゴン語では彈頭ならぬ「彈嘴」なんですね。

 


tel 【テル】 (翼)
バード・オブ・プレイの翼部も tel と云ふので、地球の飛行機の翼にも使へるでせう。
これらは好きな鳥キャラシリーズ。 特に深い意味はないですが、好きなキャラを描くことでモチベーションを保つ効果が發揮されてゐます。 ってか ちゃっくん は鳥なんだらうか? これは翼と斷言しても良いんだらうか? もし違ったらすみません(笑)

 

▼poH▼

poH 【ポゥフ】 (ヘルメット)
前後の脈絡に關係なく思ひ付いて描いたもの。 多分「これなら簡單に描ける!」とか考へて描いたんだと思ふ(笑)

 

▼ghotpu'▼

cheng Sa' 【チェング・シャッ】 (チャン將軍) ※ch, ng は一文字です。
ここから新機軸として始めた人物シリーズ。 繪を描くには向かないと散々言ってたアプリでガチ繪を描き始めるお前って何なの?
猶、名前と肩書の順序は英語と逆になる爲に結果的に日本語と同じで「名前-肩書」の順序になります。
例:カーク船長→ qIrq HoD 【キるク・ホゥド】

 


qor la' 【コゥる・ラッ】 (コール司令官)
ちょっと細面になっちゃったですね。 このアプリ、レイヤー無いから下描きとかアタリ線取ったりとか出來ないので難しいんですよと言ひ譯しておきますがこれはこれでイケメンになってゐてアリだと思ひます(*´ω`)

 


martaq 【マるタク】 (マートク)
歴代クリンゴン人の中でも一番好きかもしれないマートク! それだけに本氣で描いたが爲に面白味が無くなってゐると云はざるを得ない的な?みたいな。
「マートク將軍」→ martaq Sa'

 


ghawran 【ガゥらン】 (ガウロン) ※gh は一文字です。
DS9で殘念な事になっちゃったガウロンさん。 かわいい(*´ω`)
「ガウロン総裁」→ ghawran Qang

 

今囘はこんな所で。 描いてはゐるけど繪に向かないのは事實で、エライ神經使ふので人物シリーズはなかなか増やせません(笑)
あと最近やってる音聲動畫シリーズも纏めたいんですが、Instagramに直リンクでは面白くないので編集して繋げてYouTubeにうpするかとかいろいろ考へてゐます。 まあ下手の考へ休むに似たりってことでつまり休んでるのですがね(←えっ)
Qapla'!

qatlh Qatlh {tlh} wab?

ナワトル語(Nahuatl)と云ふ言語をご存知でせうか。 南米のメキシコの先住民族、アステカ族の言葉です。 Wikipediaによると現在でも推定百五十万人の話者がゐるらしいです。

 

クリンゴン語には英語や日本語にない特徴的な發音がいくつもあります。 ghHQStlh などです。 しかし H はドイツ語やスペイン語にありますし、S はロシア語や中國語に存在する音です。
その中で特に珍しいのが tlh の音です(アルファベット三文字で、ひとつの子音を表します)。 これは L のやうに舌先を上の齒茎に付けたまま、「舌の兩脇」と「下の左右の奧齒の内側」との間に急に息を通して破擦音を出す、なかなかに特殊な發音です。 音聲學では「無声歯茎側面破擦音」と云ひます。 地球上でもこの音を含む言語は數が限られてゐて、日本で廣く知られる、アジアや歐米の言語にはどれにも含まれてゐません。
この音は單獨で發音すると「ティ」のやうにも「キ」のやうにも聞こえる(そしてどちらでもない)音で、後ろに母音、例えば a が續くと「トゥラ」や「クラ」のやうに變化して聞こえる不思議な音です。
そしてこれが、ナワトル語の tl の發音なんですね。 クリンゴン語に似て、アルファベット二文字でひとつの子音を表してゐます。
ナワトル= Nahuatl でその名前にもこの音が含まれてゐます。 トマトの語源はナワトル語の「トマトゥル(tomatl)」に由來し、これにも tl の音が入ってゐます。 さらにアボカドも語源はナワトル語で アフアカトゥル(ahuacatl)なのだとか(意味を檢索して調べてみよう!)
スタートレックだと、TAS(まんが宇宙大作戦)にククルカンと云ふマヤの神が登場しますが、これのアステカ版が「ケツァルコアトル(Quetzalcoatl)」であり、やはり tl の音が見られますね。 同じくアステカの神である「テスカトリポカ(Tezcatlipoca)」にも含まれてゐます。
斯うして見ると、けっこう日本語化したナワトル語は澤山あるんですね。
※澤山は無い事をここにお詫びします。

 

クリンゴン人の種族名である「クリンゴン」はクリンゴン語のローマ字表記では tlhIngan となり、いきなり tlh の音があるのでこの發音が出來ないとスパイとしてクリンゴンに潜入する事すら難しいのです。
何の役にも立たないと思はれるクリンゴン語學習ですが、tlh の音が出來ると、ナワトル語の發音で苦勞しないと云ふ利點が! そして逆もまた眞なり。 ナワトル語が出來てゐればクリンゴン語學習で凄まじいアドバンテージがあるのです。

 

クリンゴン語を設定したマーク・オクランド博士の專門はネイティブ・アメリカンの言葉ださうで、その專門分野から、多くの北米人にとって耳慣れない音を異星人の言語に採用したのでせう。 これは非常に上手い方法ですが、一方で初學者にとっての大きな壁のひとつにもなってゐて惱ましいところです。 個人的にはこの音によって異文化感・異星人っぽさ感が強く醸し出されてゐると思ふので、大好きですけどね。
参考: Instagram: tlhIngan
tlhIngan Hol yIjatlh!

tlhIngan Hol jatlhjaj Dojmey!

新しいクリンゴン語單語が澤山發表されました。 主に、映畫STIDでの會話シーン(の飜譯)用に作られたものです。

 

bam (v) 【バム】=「對峙する、立ち向かう、〜に取り組む」
chIvo' (n) 【チヴォゥッ】=「完全な不名譽、名譽の絶對的欠如」
chIw (v) 【チゥ】=「示す、あふれる、にじみ出る」
chuD (n) 【チュード】=「民族、親族、同じグループや部族のメンバーまたは一族」
Dojmey (n) 【ドウジメィ】=「 〔人・それ以外兩者の〕大量、大衆、群衆、何か非常に大きいが正確な數が不明のグループ」

 

ghach (v) 【ガチ】=「待ち伏せする、潜む、身を隠す」
Hey (v) 【ヘィ】=「 〔想定上の敵ではない〕自分のグループと戰ふ」
jIvvo' (n) 【ジヴヴォゥッ】=「犯罪者、惡役、惡人 〔HeSwI' は法を破る人〕」
lIb (v) 【リブ】=「差し迫った、切迫した」
naH (v) 【ナフ】=「惡意のある、非友好的な、敵對的である」
qorgh (v) 【コゥるグ】=「〔前後が空いてゐる穴を〕塞ぐ、詰まらせる」

 

peq (v) 【ペク】=「虐殺する 〔特定の被害者をターゲットにしている事を意圖する〕」
wID (v) 【ウィド】=「虐殺する 〔無差別殺害を暗示する〕」

 

ve' (v) 【ヴェッ】=「目的のある旅をする、任務の爲の旅をする」 leng は目的の有る無しどちらにも使へる
vInDa' (n) 【ヴィンダッ】=「同胞、コミュニティのメンバー、仲間、同郷の市民」
vum (n) 【ヴーム】=「卑劣な人、極惡人、ろくでなし」
vuy (v) 【ヴーィ】=「助けになる、支える、支持する」
yI' (v) 【ュイッ】=「敬意・名譽あるやり方で話す」

 

さらに曜日の名稱
DaSjaj (n) 【ダシュジャジ】=「月曜日」
povjaj (n) 【ポゥヴジャジ】=「火曜日」
ghItlhjaj (n) 【ギトゥルジャジ】=「水曜日」
loghjaj (n) 【ロゥグジャジ】=「木曜日」
buqjaj (n) 【ブークジャジ】=「金曜日」
lojmItjaj (n) 【ロゥジミトジャジ】=「土曜日」
ghInjaj (n) 【ギンジャジ】=「土曜日」
クリンゴンの暦では一週間は六日です。
lojmItjajghInjaj はどちらも「土曜日」ですが、lojmItjaj の方がより正式な、文語體で使はれるとのことです。(ただし氣にして使ひ分ける程のものではないさうです)
また地球のキリスト暦で使はれる「日曜日」は jaj wa'(第一日)を代用として使ふ事になります。

 

例文をいくつか書いてみませう。
loD parHa'bej be'nI'Hom 'e' vIbammeH toDuj vIghajbe'. 「妹に好きな男がゐるといふ事實に、立ち向かふ勇氣がない」
cholHa'meH muD chIw vengvam loDpu'. 「この町の男達は、近寄りがたい空氣を纏ってゐる」
tugh ghoSmo' yaghvetlh naS, yoSvamDaq yIghach! 「あのモンスターはすぐ移動するから、このエリアで待ち伏せしよう!」
be' law' vuQpu' jIvvo'vetlh. 「その惡役は、多くの女性を魅了した」
jIlIb, Huch vIghajbe'. 「切迫した問題がある… 金が無い」
juppu' HoHlu'ta'bogh yInqa'moHmeH yuQ Hop ve'. 「彼らは殺された仲間を生き返らせる爲、遠い惑星へと旅をした」
vum ghaH 'a chuD rap chaH Sub vumvetlh je, ghIq Sub jup moj. 「彼は極惡人だったが、主人公と同じ民族であり、後に仲間になった」
yejvaD vuybe'chu' loDnI''a'wI'. 「私のお兄ちゃん、全く社會の役に立ってないの」

 

正直、我々地球人類には使ひ道が少ないものもありますが、それもまあいつもの事ですね(笑)

nIteb ghItlhnIS DevwI'

iPadアプリZen Brushを使用したお習字シリーズ、第九彈!
ネタが無い無いと言ひながらも九囘目。 たゞまあさすがに二度目になる單語も出てきました。

 

▼Soj▼

tera' yav 'atlhqam 【テらッ・ヤヴ・アトゥルカム】 (茸) ※tlh は一文字です。
直譯で「地球の地面の菌糸類」。 クリンゴンには地球の茸のやうな形状の茸がないのか、本來の 'atlhqam はどんな形のものなのか良く判ってゐません。

nIm 【ニム】 (乳)

wIlpuq 【ウィルプーク】 (プリン)

Dargh 【ダるグ】 (茶) ※gh は一文字です。
二度目ですが、やはりなんと云ふか書きたくて書きました。

 

▼jan▼

bal 【バル】 (瓶、壺、かめ)
レイヤーの無いアプリだと、これ描くのもけっこう面倒(*´∀`)
まず液體部分を描き、瓶の部分を描いて薄い消しゴムでハイライト、っていふやり方です。

qegh 【ケグ】 (酒樽) ※gh は一文字です。

mIr 【ミる】 (鎖)
lupwI' mIr(列車)※直譯「バスの鎖」

Hut'In 【フート・イン】 (釘)

Hut'In vIl 【フート・イン・ヴィル】 (螺子)
直譯で「畝のある釘」です。

veragh 【ヴェらグ】 (鋲、リベット) ※gh は一文字です。

quS 【クーシュ】 (椅子)

DaS 【ダシュ】 (ブーツ)

Hew 【ヘゥ】 (彫像、石像)
Hew chenmoHwI'(彫刻家)など。
私は HewHom (小彫像)で「フィギュア」の意味に使ってゐます。

 

▼porgh 'ay'▼

jIb 【ジブ】 (髪)
※體毛は pob 【ポゥブ】と言って區別します。

Ho' 【ホゥッ】 (齒)
Ho''oy'(齒痛)、Ho'Du' Say'moHwI' tlhagh(練り齒磨き)※直譯「齒を綺麗にする物の油」、Ho' teywI'(齒ブラシ)※直譯「齒のヤスリ」、jIb Ho'Du'(櫛)※直譯「髪の齒」、など。

 

現在はまたちょっと違った路線に進んでゐます。
もし更新することがあったら、次の第十彈にご期待しないでください!

taH pagh taHbe'

クリンゴンハムレット
今までに、シェイクスピアの『から騒ぎ』、さらに『ギルガメシュ叙事詩』、『老子 道紱經』の英語-クリンゴン語對譯版が刊行されてゐますが、その先鞭をつけたのがシェイクスピアハムレット』のクリンゴン語版です。 今よりもはるかに少ない語彙で、シェイクスピア最長の作品を、まあ良くも譯したものだと感心する一品です。
當然きっかけは映畫『スタートレック6』でのゴルコンのセリフ「クリンゴン語の原著を讀まなければ、シェイクスピアを經驗した事にはならない」を踏まえて、「原著を作っちゃえ」って發想に至ったのでせうが、一冊丸々飜譯された本はこれが初めてゞすから、『ハムレット』自體の知名度も手傳って、そのインパクトも大きかった事でせう。
そしてそれを、實際に公演してしまった人たちがをられます。

4:06〜は第三幕のTo be or not to be (taH pagh taHbe') から始まるハムレットの獨白。
6:11で mortal coil、7:40で The undiscover'd country の訳語が出てきます。 どちらもひとつのセリフの中に出てくる言葉です。
あと8:55で、恐らく日本語の「莫迦」が由來の侮蔑語 baQa' も。
有名な獨白を、「バトラフ演武をしながら」語ってゐるところがジワジワくるポイント。

 

後半の、
http://youtu.be/RF0k4qV1I1Y?t=11m31s
は第五幕p.159の四行目から。 墓掘り(molwI')の訛りはクロトマグ地方(Qotmagh Sep)の方言で表現されてゐて、b が m に、D が N になってゐます。 日本人には解りにくいかもしれませんが、b と m はどちらも上下の唇を一度付けて出す両唇音と云ふ仲間に属し、D と N も歯茎音の仲間で、轉訛が起こりうるのですね。 猶、 D と N が大文字なのは、英語の發音とは違ふ事を表すためです。 d、n は舌の先を上の齒茎に付けますが、D と N は硬口蓋に舌をそらせて發音します。
ちなみに日本語の語頭の「らりるれろ」の子音(ɺ)も歯茎音なので、「だめえ(damee)」が「らめえ(ɺamee)」になる轉訛もありえるのです(笑)

 

 

ところで、taH pagh taHbe' (To be or not to be)は映畫『スタートレック6』の劇中でもチャン將軍によって使はれてゐます。 しかし最初、オクランド博士は yIn pagh yInbe' と譯してゐました。 これは直譯すると「生きるか、死ぬか」で、有名な日本語譯に似た形になってゐたのですが、チャン將軍役のクリストファー・プラマーはこのセリフを教はった時、發音に力強さが無くクリンゴン分が足りないと苦言を呈したので、第二案として taH pagh taHbe' が生まれました。 taH は「續ける、存續する、持續する」といふ意味ですが、この譯の影響か、後に「生き殘る(=命が存續する)」といふ意味も追加されました。 個人的には、確かに音感的に迫力のある taH pagh taHbe' の誕生につながったクリストファー・プラマーの感性に快哉を叫びたいと思ひます。
またこの話題、To be or not to be をどう日本語譯するかといふ問題にも關はってきます。 「『生きるか死ぬか』は誤譯だ、『やるかやらぬか』が正しい」といふ主張もあるのですが、英語を母語に持つオクランド博士がまず「生きるか死ぬか」と譯してるのでこちらに分があると見て良いのではないでせうか。

 

 

baH pagh baHbe', DaH mu'tlheghvam vIqelnIS 撃つべきか撃たざるべきか、それが問題だ